誰もいない近くの公園。


そう、私は小さい頃からこの公園が好きだった。


まだ優しかった母と訪れたイメージが
この場所の隅にある一本の大きな桜の木に残っていたから。

大好きだった桜の木。

その前に立ってお別れを言ったんだ。


「あのね、今日でバイバイなんだ。大きくなったらまた会いにくるね。」


そしてポケットから手鏡を取り出した。


「私、もうこれいらないんだ。こんなのがなくても私笑えるから。」


桜を見上げて無理に笑ってみても、とっても辛かったんだよ。

だって、心の中では泣いていたから。


母親なんかいらないって、
両手で手鏡を高く掲げ、地面に叩きつけようとしたその時。

あの風が吹いたんだ…