……………


その数年後だった…


忘れていたんじゃない。

忘れようとしてたんだ、私。

そして、
…忘れる事にしたんだった…



…部屋の隅で、私の手には手鏡が握られている。

テーブルでは真剣な顔をした両親。


母親の傍らには大きな荷物。

父親は母親と目を合わせず宙を見ている。

母親は荷物を持つと私に歩み寄ってきて、


「悪いお母さんでゴメンね、あなたの事はずっと愛してる。」


って、私を抱きしめた。


何も言えずに、ただじっとしていた私。


「それじゃあ、元気でね。」


涙を拭きながら母親は出て行った。


きっと無表情だった私。
家の外に目を向けたんだ。

そこには白いスポーツカー。

知らない男の人が運転席にいた。

そして
母親が乗り込み走り去っていったんだ…。