「こんにちは」


少女から話し掛けてきた。

女は少し気まずさを感じ、


「こ、こんにちは」


と、慌てて返した。


屈託の無い笑顔の少女。

でも、どことなく悲しげな雰囲気と、
何故か親近感にも似た感覚を女は感じていた。


「近くの子?」

「うん。」

「なんだか懐かしい気がして。此処、いい所ね。」

「…」


少女は不思議そうな顔で女を覗き込みながら、


「おねえさんは何処から来たの?」


と尋ねてきた。


不思議とホッとする少女の言葉に、出来る限りの優しい口調で、


「遠い所からだよ」


と答えてみた。


少女は更に嬉しそうな表情になり、女に話し出した。


「お姉さんは何処へ行くの?」

「アテはないんだ。」

「ふーん。そーなんだ。でも楽しいの?」

「…」

「なんか、おねえさん辛そうだよ。」

「そう?辛くはないよ。」


苦笑いの女。


「うーん。でも、時々苦しくなる事はあるかもねぇ。」


それを聞いた少女は、ポケットから小さな手鏡を取り出し、
その小さな手を女に差し出す。