「え?お姉さん?」


慌てて辺りを見渡しても誰もいない。

公園の入口に停めてあったハズのバイクも無くなっている。

…と、いうよりも、
人が居た形跡すら無い…


「何処行っちゃったの…?」


不安な表情で視線をさ迷わせる娘。

その手には、観光地のお土産売り場等によく売っている様な、
《幸福》の文字が型どられたキーホルダーが残された。
………………………………………

………冒頭の公園………


………手鏡を優しく見つめる女。

涙がこぼれているが、嬉しそうな笑顔。

そして全てを思い出し、
スッキリと晴れやかな泣き顔の女は、
両手で泣き顔を拭った。


ベンチから立ち上がると、桜の木のもとへ真っすぐに歩み寄った。

そして桜に語りだす。


「夢だと思ってた。
…ずっと忘れてたけど、…やっと思い出せた。
偶然だけど…逢いに来れたよ。」


女は感慨深げに手鏡をギュッと握りしめた。


「これを割ろうとした時止めてくれたのはあなた?今の私に渡してくれたんだね。」


また涙が溢れる。

ハッと思い出し、ポケットの中を探るが何もない。