「近くの子?」

「うん。」

「なんだか懐かしい気がして、いい所ね。」

「…」


娘には女の表情がどこか悲しげに見えた。


「お姉さんは何処へ行くの?」

「アテはないんだ。」

「ふーん。楽しいの?」

「…」

「なんか、辛そうだよ。」


「辛くはないよ。でも、時々苦しくなる事はあるかもね。」


娘は、手鏡を思い出しポケットからそれを取り出すと、


「それじゃあ、これあげる。」


と、女に差し出した。