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朝から風のない穏やかな一日のハズだった。

まるで何かが駆け抜けて行ったかのような一陣の風。

その突風で砂埃が舞い、娘はしゃがみ込んだ。

桜の木がざわざわと大きく音を立てている。

ゴォォと風の音が遠ざかり、
元の静寂が公園に戻る。


砂埃に目を擦りながら娘が立ち上がると、
公園に一台のバイクがやって来る。


娘は慌てて手鏡をしまうとじっと様子を伺う。

その公園には珍しいバイクの訪問者に、
娘は目を奪われてしまう。

上下がジーンズの少し小柄な訪問者。

ヘルメットを取ると女の人で、娘は少し驚いた様子だ。


その人は疲れた様にベンチに体を投げ出した。

少しすると、顔を上げた女は自分を見つめている娘がいる事に気が付いた。