…もう、どのくらい経つんだろう……


 少し薄曇りの、暑さも落ち着いてきた季節。


YAMAHAのセローに跨がり、ジェットタイプのヘルメットに流れ込む風を感じながらフッと頭をよぎる。


まだ幼さを残していたその顔は、数カ月の間に逞しく日に焼け、
肩までの黒髪も大分伸びている。


少女と呼ぶには大人びた、女と呼ぶにはまだ不釣り合いの、その中途半端な歳がきっかけのひとつではあったに違いない。


とにかく、女は家を飛び出したのだ。


アテなんか何もなかった。

よく言うと自分探し。

実際は現実逃避なんだと女はわかっていた。


それでも、女は旅に出ずにはいられなかった。


…幾つ目の街だろう…


少し活気を無くしたような淋しさの漂う小さな街に、何かに導かれるようにバイクが滑り込む。


何処となく感じる懐かしいような感覚。


旅の途中で何度か同じような雰囲気の場所にも立ち寄っていたからか、
別段気にする事もなく住宅街を走らせていく。