「それは白崎様からいただいたものですか?」
苦々しさを抑えた声で話すのだが、侑貴はそれを分かっていない。侑貴は結崎に眩しい笑顔を見せて首飾りに手を添えた。
「そうよ、綺麗でしょう」
無邪気に笑う令嬢を見て、こんなに彼女に好かれている隆一に、執事は嫉妬を覚えずにはいられなかった。
しかし、嫉妬をしているということを令嬢に知られてはならない。それ故、すぐにまた美しい笑顔を取り繕った。
「…侑貴様、既に御夜食の時間で御座いますよ。広間へとお連れ致します」
「そう。分かったわ」
何も知らない彼女を背に、結崎は考えを巡らせていた。どうにかして、彼女と白崎の仲を引き裂きたいと。
元々、侑貴と隆一の仲は周りの人間達には秘密にされていた。と言うのも、二人の身分が違いすぎるからである。
以前、偶然二人の関係が侑貴の父親に知れてしまったとき、父親は酷く彼女を叱ったことがある。
侑貴は財閥の令嬢だが、隆一は一般庶民でしかない。それから二人は、会うことを禁じられてしまった。
表向きは隠れて彼に会う令嬢の手助けをしているが、裏では、そんなことはしたくないと思っていた。
理由は個人的なものだが、とにかく結崎も二人の関係を終わらせたいと思っている。
ふいに後ろを振り向き、侑貴に耳打ちをする。そして彼女は、コクリと首を縦に振ったのだった。
