ふと会話の途中に空を見上げれば、空に闇が降りようとしていた。
執事と約束していた時間が近付き、楽しい時間はあっという間に過ぎる。
まだ隆一と話したいことがあるが、約束を破って屋敷に軟禁状態にされたら、たまったものではない。
悲しそうな顔をしながら、名残惜しそうに侑貴が切り出す。
「…もうすぐ、家に戻らないと」
「もうそんな時間か…じゃあ、家の前まで送るよ」
「…ありがとう」
そう言って、二人は重い腰をあげ、来た道を戻り始めた。
その川辺から屋敷までは、遠いようで近い微妙な距離。行きは遠く思われても、帰りは近すぎて逆に物足りなく思われる。
隆一が一歩前を歩き、侑貴がその後ろを歩く。
侑貴は隆一の大きくて広い背中が好きだった。小さな頃から慣れ親しんだ背中。そのぬくもりを、もっと感じていたい。
一緒にいたい気持ちや、会いたいという気持ちは抑制されると、もっと膨らんでしまうもの。
徐々に屋敷が近くなるにつれて、侑貴は寂しさを募らせた表情になってゆく。しかし、それは前を歩く隆一には分からない。
そして、ついに屋敷の前についたとき、隆一は足を止めて後ろに振り向いた。
