「さて…邪魔ものは消えるとするかなぁ…」
「柏木さん…あの…」
桃香が呼びとめる。
「ごめんな。俺のせいで…桃香ちゃんにも陸にも辛い思いさせて…本当すまない」
深々と頭を下げる柏木先輩。
「いえ…先輩は桃香の事…助けてくれたのに…もとはといえば俺がガキだから…すいませんでした」
「いや…俺だって桃香ちゃんに惹かれてたのは事実なんだしさ…本当悪かったな」
もう一度ごめんと謝って、柏木先輩は帰って行った。
柏木先輩が居なくなって、2人きりになって…
桃香はもう一度、俺に謝った。
「ごめんね、陸くん…」
半泣きで謝る桃香。
「ごめんは俺の方だって…本当にごめんな、桃香…」
「ううん。いいの。陸くんが今傍に居てくれるだけで…嬉しいもん…」
「うん…俺も…もうダメだって思ってたから…」
「私も…本当に失うの怖かったよ…もう離れていかないで…」
俺は桃香が愛おしくて、愛おしくて、
めいっぱいの力で桃香の事を抱きしめてたんだ。
そして、もう絶対に離さないと心で誓って言葉にした。
「絶対離さないよ…」
そしたら、俺に抱きついてた腕の力を、
もっと強くして、きつくきつく抱きついてきた。
良かった…
この大切なぬくもりを失くさずにすんで…
俺は心からそう思った。