のんちゃんの言葉を黙って聞いてた陸くんが、
静かに口を開いた。
「近くに居過ぎると、見失うことってあるんですよね」
「え?」
「どれだけ大切な存在だったか…失ってから気付くこともあるんですよ」
陸くんは、静かに続けた。
「毎日一緒にいると、その大切さは近すぎて眩んで見えにくくなるんです。
男はバカだから、新鮮さを求める人もいる。未練たらしい人もいる。
後先考えずに、行動して後悔した時にはもう遅くて…過ちに気付いても、
もう後戻りも出来なくて、彼氏さんは彼氏さんなりに悩んでたんだと思います」
「両方好きだから…だから悩んでたんでしょ?」
陸くんの言葉に、のんちゃんが反論する。
「う~ん…これは僕の考えですから、実際そうかはわかりませんが…
でも彼氏さんは過ちを犯して、後悔したんだと思いますよ。たぶん…
その時点で、希美さんが1番大事だって気付いたはずです。きっと…」
「…だったら何で悩む必要があるの?」
不思議そうに聞き返すのんちゃん。

