夜の荒々しさが嘘のような静かな朝。

隣には渚が眠っている。

白い肌に傷痕がついている。

僕がやったのもあれば、前々からあった傷もある。

残しているのか、治らない傷なのか。

「従う必要が、どこにあるというんだ?」

最後まで答えは出なかった。

立ち上がろうとすると、手首を掴まれた。

「今日は同行すると言いましたよね?」

隣を見ると、渚が笑顔で起きている。

「必要のない確認だ」

僕一人では見つけにくいのも事実だから、渚を置いていくはずがない。

二度手間になるのは避けたいところだ。

僕が服を着ている間に、渚もパジャマを身につけた。

「少しシャワーを浴びてきますので、お待ちいただけますか?」

「行けばいい」

僕にとっては、どうでもいい事だ。

渚の背中を見ながら、昨日の様子を思い出した。

何をそんなに悲しんでいるというのか。

何の手がかりもない今の状況では全てが憶測に過ぎない。

「どうでもいい」

僕は強くなれればそれでいい。

拳を握り締めて、覚悟を決める。

能力者と戦うという事は、死ぬ可能性があるという事。

その死線を乗り越えなければ、強くはなれない。