夜獣2-Paradise Lost-

先ほどの不良たちとは違い、同門の武道家。

能力なしでいえば、僕より実力がある。

だが、今は強弱関係ない。

前の壁をぶち壊し、奴も壊さなければならない。

夕子を殺して、堂々と街中を歩いている乾を許しはしない。

僕の出した蹴りは海江田の顔を捉えられない。

「ちい!」

海江田は上半身だけ後方へずらし避けており、攻撃を放つ準備をしていた。

不良達のように簡単にいかないのは解っている。

しかし、ここを乗り越えなければ、本当の成長は手に入れられない。

「お前の不思議な力は人間が持っていてはならない代物だ」

「知った事じゃない」

「まして!正式な試合で相手の隙を狙って使うなど、断じてあってはならない!」

能力を解放し、さっさと終わらせなければならない。

紅眼となり、海江田付近の白い空気を見つける。

「だが、お前のような腐敗した者を倒すためならば、正式な試合とは程遠い闘いを行おう」

「お前が能力者だろう人間だろうと、敵である事に変わりない」

海江田は紛れもない人間だった。

だが、能力者へと変貌を遂げたらしい。

その証拠に、紅眼へ変化している。

「人間のいない土俵に私も参戦させてもらう!仕切りなおしだ!」

海江田の語尾と同時に、顔面付近にある白い空気目掛けて突きを出す。

海江田は避けることなく、両腕でガードの姿勢を取る。

互いの肌が触れ合う前に空気が爆発し、両者一斉に後方へ吹っ飛ぶ。

正しく言えば、僕は腕のみが後ろにはじかれ、海江田は身体ごと飛んだ。

ガードしていた海江田は倒れる事無く、数メートル先で防御の姿勢をとって立っていた。