夜獣2-Paradise Lost-

公園の外には、渚専用の黒の車を待たせている。

スモークが張っていても解る。

中には運転手が待機しているみたいだ。

今日は熱した体を冷やしながら、家まで歩いて帰る事にした。

桜子に車の中で目覚められると色々面倒だ。

渚に桜子のことを一任したし、彼女ならば問題ない。

僕は車に背を向けて歩き始めた。

しばらく歩き続けて、人気が少なくなってきた頃。

いつもの道に、見覚えのある影が通ったような気がした。

よく見えなかったが、僕のよく知っている人物だと感覚で捉えられた。

忘れるはずもない。

血液が煮えたぎり、爆発するくらいの怒りが表へと湧き出る。

「乾いいいいいいいいい!」

名前を呼ぶ際には、積年の恨みと呪詛を込める。

「このドクズがあ!死ねええええええ!」

3年前の映像が流れる。

夕子の笑顔がチラつき、連続して夕子を殺した後の乾の笑顔。

「殺してミンチにしてやる!」

乾は前方のT字路を右から左へ真っ直ぐ進んでいく。

怒りが収まることなく、世界から消滅させるために走る。

だが、T字路の交わり手前で、右から誰かが出てくる。

「な!」

「お前は卑怯者だ」

壁になっている男は、道場で粉砕した海江田だ。

傷跡が存在するが、闘えるようだ。

「どけえええええ!」

壁一枚を叩き壊すがごとく、上段蹴りが海江田目掛けて放たれていた。