夜獣2-Paradise Lost-

攻撃範囲からいえば負けている。

ここでカウンター狙いは難しいが、出来れば成長に繋がる。

残り数センチ。

眼でナイフを追い続ける。

「ふ!」

鼓動が最高まで高鳴ったのと同時に手を出す。

タイミングを合わせた受けはナイフの側面を小掌で弾き、顔が前へ出てきたところに拳を入れた。

カウンターだけあって、能力を使わずとも後ろへ吹っ飛ぶ。

「ふう」

少しでも遅れれば、胸に刺さっていた。

「やるなら続けるぞ」

少し息が上がってきたが、興奮のほうが勝っている。

勢いが衰えている残党はかかってくる気配がない。

「やらないのか?」

二人に近づこうとすると、足元に何かが飛んでくる。

地面に弓矢が斜め45度ぐらいに刺さっていた。

もう一歩進めば、足に穴があいていたことだろう。

「耕一さん、今日は目的を果たせたと思いますよ」

渚は弓を構えて、僕を射ようとしている。

「進めばどうなる?」

「試してみますか?」

「面白い」

弓矢の速度に対応できるかどうか試してみたい。

しかし、渚は僕の楽しみを奪うかのように弓を下ろす。

「戦意のない相手との闘いは無意味です」

「確かにな」

公園の中には増援を合わせると10人が横たわっている。

時間を考えれば、通報されていてもおかしくはない。

「桜子を頼んだ」

先ほど起きたかと思った桜子だが、再び気を失っている。

「少しでも近づけば犠牲者を増やす」

不良二人を睨みつけると、怯えながら静かに頷くだけだった。