夜獣2-Paradise Lost-

鍛錬していても痛覚が働いている以上は痛みが走る。

しかし、敵陣の中で一休みしている時間はない。

痛みに耐え、背後から殴打してきた不良3に当身を食らわす。

不良3の前には白い空気が存在しており、磁石が反発しあうようにお互いが反対方向へ飛び、不良2の間合いへと入り込んだ。

不良2は対応が出来なかったらしく、隙が出来きたところに打ち上げでアゴを砕く。

そして、崩れそうになる前に不良2腹部付近にある白い空気を蹴って、ライナー状に宙を滑っていく。

周りに囲んでいるおかげで、狙わなくても不良4がいた。

呆気に取られていた不良4の頬にニーをかまし、地上へと降り立つ。

息を吸い込むことなく、次の相手を殴り倒すことだけを考える。

背後に影が見え、地面に倒れようとした不良4の服を引っ張って後方の攻撃の盾に使う。

不良5は攻撃してこず、手にはナイフがあった。

仲間を刺傷させるのに躊躇っているらしい。

油断している不良5に不良4を押し出し、気絶している不良4の背中を蹴ると爆発して吹っ飛ぶ。

都合の良いことに公園の白い空気の密度は多い。

自分の意思を組み込むと吹っ飛ぶので楽といえば楽だ。

空気爆弾には強力な威力がある。

格闘技をやっている海江田も吹っ飛んだからな。

2人飛んでいき、残る相手は3人。

5人も失うとほぼ戦意は喪失しているといってもいいだろう。

だが、止めるつもりはない。

「人数分の対価を払え」

望みは成長のための犠牲。

両手で指を鳴らして、次の相手を見定める。

「その辺にしてあげてはどうでしょう?」

公園の外から聞き覚えのある声が届く。

「渚」

渚の方を見た時、不良6が突っ込んでくる。

「余所見すんな、このダボが!」

距離が開いていたおかげで、攻撃はまだ受けていない。

「お前の優しさは届いてないみたいだな」