「私、もうこんなゴタゴタに巻き込まれたくない」

「え?」

亮に顔を見られないように、後ろを向いた。涙が、止まらない。

「別に亮のこと、本気で好きだったわけじゃないし」

私の肩、震えてないよね?

「悪いけど、私のことはほっといて。もう、関わらないで……」

胸が、引き裂かれるように、苦しかった。

「……わかった」

亮の声は、低く、小さかった。でも、私の耳にはっきりと届いた。すぐさま振り返る。亮は背を向け、歩き出していた。ザアアッという雨音が脳に直に響く。亮の姿が見えなくなるまで、私は、その場に立ち尽くしていた。