彼女がいつも同じ席に座る理由を、僕は知っている。
違うクラスで、学年の違う男子が、いつも彼女と同じように早く来て、窓際の後ろから3番目の席に座るからだ。
知らないふりをしているが、彼女も僕が知っていることに気づいてるんだろう。
こんな可愛らしい青春時代を過ごす彼らを、羨ましいとも時々思う。
『先生、子供とかはいないんですか?』
急に話しかけられて、一瞬なぜそんな事を聞かれたのか理解出来ずに、首を傾ける。
『奥さんとは、結婚して長いんでしょ?この学校に来た時から指輪してるし、机には写真も飾ってあるから。子供いないのかなって。ちょっと思っただけなんだけど。』
僕の反応に、彼女はバツが悪そうに言った。
あぁ、そういうことか。

