ハントウメイ




彼が扉開き、私をエスコートする。


私は屋上に飛び出す。


柔らかい春の風が吹く。




カチャン


後ろで静かに扉の閉まる音がした。


扉のほうを向く。


彼が笑う。


私も笑う。



彼から目を反らし前へ進む。



自然と彼の足音がついてくる。


屋上の中心までくると二人とも足をとめた





「…蓮、」


「ん?」


「ありがとう」


「…どういたしまして」
彼が私を見てるのを感じる。


だけど、彼の顔を見れない。




すると、強い風が吹いた。
目をつぶる。

風をよけるために彼のほうに顔を向けてしまった。



ゆっくりと目をあけると彼と目が合う。




………まただ。
そう思った時


彼が微笑んだ。




だから

「…さっき言った事は本当、屋上に出たかった。けどもう一つ、朝と同じ理由だよ。」
私は自然と口をひらく。

「え?」

言葉を続ける、


「また体調悪くなってさ、しばらく休んでようと思って座ってたの。だけど…蓮が現れた。蓮に会ったらまた大丈夫になってた」


私、なにペラペラ喋ってるの。

こんなのどうでもいい事。


「そっか、良かった。てゆう事は朝も?ってそっか、そっか。」


彼は、蓮はきっと優しい。




「だから、なんだろう不思議だよ。…ありがとう。」

「それって感謝される事?」

「うん、多分。」

「まぁ、いっか。どういたしまして。」

彼はそういって微笑んだ。