どれくらいたっただろう。
2人とも口をひらく事なくしばらく外を眺めていた。
私は時折、気付かれないよう彼の横顔をみる。
遠くを見つめる彼の顔はとても綺麗で、どこか穿かなくて、
男の人に対して言う言葉ではないのかもしれないけれど、
触れたら直ぐに壊れてしまうガラスのような。
そんな君。
ねぇ、蓮。
君はなんでそんな顔で遠くを見つめているの?
無表情。
なのに悲しい瞳。
「……ねぇ」
「ん?」
「……何か…」
あったの?
「……何か?何?」
言葉に詰まった私に彼が振り返る。
優しい笑い。
作った笑顔。
「………うんん。」
彼の瞳を見つめる。
「何でもない。…気にしないで」
そう、簡単に聞いちゃいけない。
何十分か前に初めてあった、ただ名前を知っているだけの赤の他人。
そうだよ、赤の他人。
なのに何で。
「……不思議。」
私は気がつくとそうはいていた。
彼の瞳が私に向いているのに気付いた。私は気付かないふり。
だけど彼の瞳は直ぐにまた外に向かう。
「………不思議か。そうだね、玲は不思議だね」
「え?」
彼の方を思わず振り向いた。
不思議?…何?
つい言ってしまった私の言葉にそんな返事が反ってくるなんてと思わなかった。
だって、そう。
[不思議。]
それは私が私自身に言ったような言葉だったから。
彼はこっちをむいて言葉を続ける
「…俺と目が合った瞬間、固まるし。固まったかと思うといきなり窓跳び越えてくるし。…何かあんのかな?なんて思ったけど、別に落とし物を拾いたいわけじゃないみたいだし。…それにさ…玲が来た瞬間、時が止まったみたいだった。」
少し微笑むと
「玲は不思議だね」
そう、彼は言った。
