「大城くんってさ」


「……なに?」


「もしかして」


「…………?」


「寿梨のこと、好きなの?」


「そうよ」


「なっ! バカ! 即答かよ!」



随所に赤線が引かれた台本を投げ出し、とっさに真横に居た無表情女の口を塞いだ。


右手を君原妹の口に当てて数秒後。


我を忘れて慌てふためく俺に、真正面の乙部はにんまりと満面で笑う。


しまった。
これは完全に墓穴を掘ってしまった……。


しかも二つも、だ。



「今の大城くんの顔! 超テンパっちゃってて新鮮~!! 珍しいモノ見ぃちゃった」


「ですって。良かったわね」



一人キャーキャー騒ぎまくるミーハーな乙部を余所に、俺の放り出した台本を拾い上げた君原妹は含み笑いを浮かべている。


それをもぎ取るように受け取り、君原妹を恨めしげに睨み付けた。



ちくしょー。
また一人、俺の本性を知る人間が増えてしまったじゃねーか……。



放課後になった瞬間、クソ真面目に生徒会室に向かった自分の勤勉さを呪った。



君原妹と乙部しか居ない時点で気付くべきだったんだ……此処はヤバいって。