もしかして大城くんって……の続きを誰かが口にする間も無く、全員の注目は軟派な笑顔の兄貴に手を取られた君原妹に注がれている。



当の本人は一瞬だけ驚いた顔をした後、



「…………」



散々テンパって拍子抜けした俺の情けない面をチラリと見やった。



「違いますよ」




弟さんの想い人の寿梨はあっちの娘です。



抑揚のない君原妹の声を思い浮かべながら、俺の背中には何やら冷たいモノがだくだくと流れ落ちていた。



アカン、今度こそ終わりやさかい……。



相当にヤラれた頭の中が、イントネーションの狂った関西弁に再び占められる。



「わたし男です。女装癖があるんです」


「えっ!!??」



思いがけない切り返しと、それとは裏腹な見慣れた無表情にその場の全員が呆然と君原妹を見て固まった。



そんな諸々の戸惑いの眼差しなんて毛ほども気に留めず、



「因みにあっちに突っ立ってる双子の兄も、家ではもっぱら全身フリルです」


「なっ……」



涼しい顔をした凶悪犯は、無関係な双子の兄を道連れに陥れる始末。



……最強で最凶のポーカーフェイスだ。