結局。
せっかく誤解が解けたものの、君原妹の一言で寿梨はまた俺の前から後退りしていってしまった。



またふりだしだ……。



「だから謝ってるじゃない」


「…………」



衣装の確認がしたいからと、君原妹に連れられて家庭科室の倉庫に来ていた。


うずたかく詰まれた衣装ケースに、布の山のオンパレードでオマケに埃臭い。



更には、せっかく解けた寿梨の誤解がまたこじれたので俺の気分は絶不調だ。



反省の様子が微塵も感じられない淡々とした隣の女には、もう愛想笑いすら浮かばない。



「挽回のチャンスくらいお膳立てしてあげるわ」


「えっ?」



そう言って君原妹が布の山から引っ張り出したのは、白いサテンの布地だった。


ツヤツヤしたそれを俺に手渡し、



「これで姫に贈るクチナシを作るの」


「……誰が?」


「アナタがよ」


「……なんで?」


「挽回のチャンスよ。失った信用を取り戻すには誠意を見せなくちゃ」



信用を損なわせた張本人がもっともらしい口調で言い放った。