小さい体を更に縮こまらせている姿があまりにも不憫だ。
かと言って、俺としても模範生徒の称号を取り下げるつもりはない。
「……なぁ。今日見たこと聞いたこと、全部忘れるよな?」
「わー、拒否権なしだー横暴ー」
隣で騒いでる那津を無視し、扉の隅で縮こまってるダサ子に迫っていく。
壁に追いやられ、影になった俺を見上げる顔が泣きそうで……ちょっとばかし良心が痛んだ。
「もしバラしたら…………襲うよ」
「っっ!!」
とっさに貼り付けた作り笑顔が余計に恐怖を煽ったらしく、彼女は完全に言葉を無くして固まったまま機械のように首を上下に何度も振った。
ちょっとやり過ぎた感があるけど……多少の犠牲は止むを得ない。
どうせ一年か二年だろうし、関わるコトも無いだろう。
音楽室の扉に手を掛けた所で、
「って言ってるけど、童貞くんの澪斗にそんな勇気ないから安心していーよ」
縮こまる彼女に笑顔で耳打ちする那津に、思わずズッコケそうになった。
っていうか躓いた。

