向かいの那津と顔を見合わせ、恐る恐ると窓の外を覗いてみる。
日当たりの悪い校舎裏のそこでは、仁王立ちした背の高い女子と腕組みをした胸のデカい背の低い女子が鬼のような顔で睨み合っていた。
「……澪斗、これ」
「……ヒロイン争奪戦」
生の争奪戦を目の当たりにしたのは初めてで、
「立候補取り下げなさいよー!!」
「アンタが取り下げな!!」
悲鳴のような奇声が上がったと同時に掴み合う女子たちに……それ以上を見る勇気は持てなかった。
「あっ、澪斗! 見て行かねーの?」
ふらっと立ち上がって出口に向かう俺に、那津の軽い足音が続いた。
「いや、さすがに無理。萎えるよ、あんなん見たら」
「えー。澪斗の為に闘ってんのにぃ」
「バカ。万が一あんな強烈な女子がヒロインにでもなってみ。……俺一生トラウマになってエッチ出来ないね」
「ははー。言えてる言えてる」
なんて言いながら当事者の俺が笑ってるなんて、校舎裏の彼女たちは夢にも思って居ないだろう。
それどころか、俺を見て歓声やら憧れの眼差しを向けてくる女の子たちには絶対聞かせられない。
……はずだった。

