「あっ! しまった! 昼休みに生徒会室に呼び出されてたんだった!」
寿梨の台本の話で思い出したのか、デカい声を張り上げた乙部が食べかけの弁当に蓋を被せる。
「ちょっと行ってくるよ!」
口をもごもごとさせながら寿梨と君原妹に告げ、慌てて走り去っていく。
その背中を見送り、またフレンチトーストを千切った所で、
「無理してるんじゃない?」
「えっ……?」
問い掛けた君原妹の顔は、どことなく心配そうに眉尻を下げていた。
キョトンとする寿梨は、フレンチトーストを摘んだまま君原妹を見上げている。
「ヒロインのコトよ。台本に目を通したらプレッシャーや緊張で眠れなくなった……そうでしょ?」
君原妹の指摘に寿梨の顔色がにわかに変わった。
口を噤んだまま視線を足元に落とし、枝垂れた前髪が寿梨の顔色を隠してしまう。
「……鮎花ちゃんには、やっぱり隠し事出来ないね」
「当たり前よ。幼なじみなんだから。飛鳥も心配してるわ」
幼なじみだったのか。
だから、会長は寿梨のコトを名前で呼んでたんだな。
俺が納得した所で、冷たい秋の風が二人の間を吹き抜けた。

