男子、恋をする


どうせまた三振だろ。


そう思って、つまらない試合から黒板に視線を戻そうとした時。


「おーっ!」


カキーンというキレの良い金属音と同時に、グラウンドが女子たちの歓声で沸く。



そして、



「寿梨ー!! 行ったよー!!」


マウンドから大声を張り上げる乙部の言葉通り、山なりに上がったボールは真っ直ぐに落下点であるセンターに落ちていく。


ベタベタな外野フライ。
なのに肝心のセンターは胸元でグローブに右手を添えたまま、タジタジと足ばかりを動かしている。



足じゃなくてグローブ動かせっての。



なんて思っているうちに、


「あっ! 寿梨!!」


ボールは見事にグローブでなく、寿梨の頭にヒットした。

地面に落ちたボールも、フライからヒットに変わる。



……これまたベタな展開だ。



体勢を崩した寿梨が後ろにひっくり返り、乙部が慌てて駆け寄る脇では、カバーに入った君原妹がボールを素早くファーストに投げていた。


……コイツの冷静さの10分の1でもあれば、脳天直撃は避けれたんだろうに。


乙部に起こされ、眼鏡のずり下がった顔で苦笑いを浮かべる姿に、思わず小さな溜め息が零れた。