手を振る彼女たちに一言告げ、身を翻して廊下を歩いていく。
笑顔スイッチOFF。
さすがに同じコトばっかり何回も言うのはいい加減に鬱陶しい。
「……はぁっ」
女子たちの気配の無くなった廊下で一人溜め息をついて、前髪をくしゃくしゃと掻いた。
これがしばらく続くのかと思ったらウンザリだな。
いや、めちゃくちゃウザくて仕方無い。
「すごい演技力っしょ? ヒロインなんだししっかり見習うんだよ?」
「あっ……は、はいっ」
「っ!?」
すっかり人気が無くなったと思いこんでいた廊下の隅から声がして、思わず慌てて顔を向けた。
そしたら、
「やっ! モテモテ澪斗きゅん!」
人懐っこい笑顔に嫌味がパンパンにこもった鬱陶しい顔の那津と、
「っ…………」
俺と目が合うなりおもむろに視線を足元の床に落とした寿梨の姿が飛び込んできた。
珍しく放課後になった途端に姿が見えないと思ったらこんなとこに居たんだな……バカ那津。
しかもまた、最悪のタイミングで寿梨と出会した。