『学年演劇のヒロインは当日まで非公開とする』
学校側が出した思いがけない発表に、女子生徒たちはどよめきや不満の色を見せていた。
「大城くん! ヒロインって誰?」
「その人は本当にヒロインに相応しいんですか?」
「こんなのって納得出来ないわっ」
廊下を歩いていた俺を数人の女子たちが囲む。
揃って口にするのは内緒のヒロインのコト。
中には恐らく争奪戦に参加したんだろう、絆創膏やらガーゼを貼り付けた奴まで居てる。
もう朝から今日だけで十回は聞かれた質問。
……まぁ。散々やり合った結果がこれじゃあ納得出来ないよな。
「当日まで非公開なんて、みんなには申し訳ないと思ってるんだ」
如何にも申し訳無さそうな、しおらしい表情を浮かべた俺に女子たちは次々に口を噤んでいく。
こうなったらこっちのモノ。
後はやんわりとたたみかけてしまうだけ。
「でも、俺もヒロインの女の子も精一杯頑張るつもりだから応援してくれるかな」
「勿論です!!」
「最前列で応援するわっ!!」
にっこりと笑ってみせた俺に、女子たちの歓声があがった。
はい、これで完了。