「大城先輩! 学年演劇がんばってくださいっ」
「楽しみにしてますっ」
学年演劇の主役が発表されてから三日。
頬を赤らめた下級生の女子グループが、廊下に蔓延り小さな悲鳴と声援をあげている。
何回見てもかなり異様な光景だ。
……その渦中のド真ん中に居る人間が言うのもおかしいけど。
そんなことを考えているなんてことは微塵も顔に出さず、
「ありがとう」
すっかり得意になった爽やかな愛想笑いを浮かべれば、
「キャーッ!!」
廊下中に幾つもの悲鳴が木霊した。
……頭、おかしいんじゃない?
なんて心の中で毒づきながらも、慣れっこになった風景の中を通り抜けて行く。
その背後で、
「さーすが澪斗きゅんっ! 超絶人気者!」
俺より少し小さい派手な茶髪の男が、ダボっとした濃紺のセーターを纏った腕を俺の首に絡めてきた。
「うるせーバカ那津(なつ)」
完全に茶化しにかかった声がウザくて、俺はさっきとは打って変わった低い声で呟く。