「やはりヒロインを使わない方向で考えていくしか無いんじゃないか」


「ダメダメ! もうシナリオはほとんど書き終えてるもん!」



会長がこれを提案するのは何度目か。

その度に乙部が躍起になって拒否をする。


この堂々巡りの繰り返し。
もうここまで来たら、俺としても会長の意見に賛成せざるを得ない感じだ。



「どんな話なんだ?」


乙部があまりに必死になるもんだから、会長も気になったんだろう。


やや呆れた顔で切り出した会長に、



「よくぞ聞いてくれました! ロミジュリをベースにした悲恋モノで……」



意気揚々と答える乙部の瞳が一気に輝き始めた。


さすが女子。
ロミオとジュリエットなんていう王道を取り入れてきたな……。


なんて、他人事みたいに思ってる主役の志気の低さ……。



「わかった。一緒に考えるからアクション系の活劇にしよう。一匹狼の浪人が……」


「ストーップ! 会長のは時代劇でしょ! 絶対ダメ!」



即却下された会長は不満そうに目くじらを立てる乙部を見る。


乙部も乙部で絶対に譲れないと、負けじと会長を見つめ返している。