まだ気怠さの残る体はもちろん本調子じゃなく、劇の練習もダンスの練習も出来そうになかった。
「……10時30分」
何かあったら呼べと枕元に会長が置いてくれていた携帯を手に取った。
多分今頃舞台ではどんどん練習が進んでいってるんだろう……主役の俺を置いて。
「はぁ……」
……何やってんだろうな、俺。
劇も君原妹のコトも……何一つとして上手くいってない。
熱で気が弱ってるのも手伝って、自分が情けなくて寝汗で濡れた前髪をくしゃくしゃと掻いてると……。
「起きて平気なの?」
「っ!!」
那津の悪夢で目覚めてから十数秒。
傍らから聞こえた声に盛大に全身をびくつかせた。
まるで昨日の保健室のデジャヴュだ……。
制服姿の君原妹が寝ていた布団の隣からじっと俺を見つめていた。
「熱出したって聞いたから……様子見に来たの」
心なしか。
昨日最後に見た不機嫌面が少し心配そうに見えるのは……多分熱のせいだと思う。
あんなに怒ってたコイツが俺を心配するなんて……天地がひっくり返っても有り得ない。

