君原妹の機嫌を損ねた理由がわからないまま、仕方なく男子の部屋に戻ることにした。
わざわざ差し入れを持って行ったってのに、なんだってあんな態度取られなきゃなんねぇんだよ……。
君原妹の不機嫌さが腑に落ちず、頭の中でブチブチと独りごちる。
そんな俺の背後で、
「大城くんが女子に騒がれてる割に童貞な理由がよくわかったよ」
「乙女心のおの字もわかってねぇもんな。そりゃ童貞だわ」
「っるさいな! 放っとけよ! あと童貞は関係ねぇ!」
一定の距離を保ちながらついてくるバカコンビから嫌味の応酬を浴びせられる。
あまりの鬱陶しさに目くじらを立ててツッコむ俺を、
「あるよ。少なくとも清兄はその辺ちゃんと心得てる。じゃなきゃ複数の女の子相手になんか出来ないしな」
「はっ? なんでここでバカ兄貴を引き合いに出すんだよ」
「じゃあ澪斗はわかってんの? 鮎花姐の不機嫌の理由」
「それは……」
那津が淡々とした口調で言いくるめてくる。
しかもわざわざバカ兄貴の名前まで出すから余計に腹が立った。