「……大城くんの衣装、あちこち傷んでて……すごく直すの大変だったんです」
「えっ?」
「鮎花ちゃん……お昼休みとかも、ずっと肌身離さず持ってて……手直ししてたから」
いつもより口数が多いのは、それだけ君原妹のことを心配してるんだろう……。
そうだ。
コイツはいつだってこうして誰かの為に動くヤツだった。
ヒロインを引き受けた時だって……乙部や会長の為で。
身の丈に合わない努力って鼻で笑ってたけど……。
女の子一人の気持ちすら気付かない俺なんてそれすら出来てないってことか。
……道理で寿梨の視界に俺は映らなかったワケだ。
「……わかった。持って行くよ」
自分の中で何かが吹っ切れた。
それが何なのかはまだわかんないけど……。
「あ、ありがと!」
おにぎりに手を伸ばした俺に寿梨が浮かべたのは、俺が好きだって思った嬉しそうな笑顔。
これは俺じゃなくて君原妹の為に浮かべられたモノだって気付いてしまったから。
俺はこの笑顔に焦がれるのを辞めよって思った。

