男子、恋をする


「練習に戻るからって先に出て来たから知らん」


開口一番なんで君原妹?とは思ったものの。
余計な火種は撒くまいと、如何にも素っ気ない口調で返してやった。


そしたら那津の顔が何故か心底呆れたような表情になり、


「……置いて来たんだ。わざわざ付き添ってくれてた娘を」


ムカつくくらいの盛大なため息をお見舞いされてしまった。


なんだこの……俺が悪いって言わんばかりの反応は。


むしろ最強で最凶のポーカーフェイスを倒れた俺の元に置いていったコトに怒りたいくらいだ。



「鮎花姐、心配してたぞ。自分がからかいすぎたせいかもって……。ただの寝不足なのに」


「それも一理あるだろ」


度重なるヤツからのストレスも原因の一端。
俺はそう思ってる。


だからこんな風に素っ気なく言い返してみたワケだけど。
どういうワケか那津はいつものようにからかうでもなく、ただ真顔で俺を一瞥。


そして一言だけ。


「だから澪斗は童貞なんだよ」


一切の脈絡もなく舌打ち混じりに吐き捨てて舞台から降りて行った。