しまったと思って口を噤んだ時には遅い。
驚いた顔の君原妹はもうそこには居なかった。
「知ってるわ。そんなことくらい」
「えっ……」
「顔を合わせる度にビクビクされれば誰だって気付くわ」
いつものポーカーフェイスに戻った君原妹は、何事もなかったように口調もいつもの淡々としたモノに戻っていた。
あまりの切り替えの早さに思わず俺の方が呆気にとられてしまう。
「まだ1時間くらいしか経ってないわ。早く行ってらっしゃいな」
そんな俺の後ろに素早く回った君原妹に背中を押され、あれよあれよという間に保健室から追い出されてしまった。
ピシャリと閉められたドアに思わず立ち尽くしてしまう。
一刻も早くここから出て行くことを望んでたのに……なんだこの感覚。
思っていたような嫌味を言われなくて肩透かしをくらったような……。
とにかく調子が狂う。
とりあえず舞台練習に行けるのでヨシとするか。
踏み出した足元にはさっきのような立ちくらみの感覚はなくなっていた。

