会長に負けたくないっていう想い……っていうか意地だけで足を一歩踏み出した時だった。
貧血の副作用で頭が一瞬ぐらつき、体勢を崩しかけた俺を、
「だから言ったのに。意地張ったりするからよ」
「っっっっっ!?」
正面に居た君原妹が全身で受け止めた。
淡々としたいつもの口調が耳のすぐ近くで聞こえて、思わず全身がガチガチに硬直する。
その途端にまたフローラルの香りが鼻先に蘇った。
よりによってコイツがお花畑の正体だったとは……。
大城 澪斗一生の不覚。
俺は初めから地獄に居たってことだ。
しかも忠告を無視した挙げ句まんまとこの様だ。
「大城くん」
「わ、悪い。足元が少し絡まった」
嫌味を言われる前にさっさと退散してしまうに限る。
あくまでも平静を装い、君原妹から離れようと体を動かす…………が。
「……あの」
「………………」
俺の背中に回していた腕の力は緩むどころか強まるばかり。
この展開はまさか……例の俺を性犯罪者一歩手前にしたてあげるいつものヤツか!