なんて腹の中では思っていても、
「このまま女の子たちが傷付け合うのは俺も心苦しいしね。早く何とかしないと」
如何にも善人ぶった口調で、憂いたように頭を悩ませてみせる。
「まっ、澪斗の演技力は抜群だからそっちの方は安心だけど。ね? 澪斗きゅん?」
それを横目に見ながらワザとらしい口振りで嫌味を言ってくる那津をシカトし、相変わらず頭を抱える生徒会コンビに目を向けた。
二人の真剣な顔で考え込んでる姿が飛び込んで、少しばかり申し訳なくなるのも事実。
「うーん……」
乙部の唸り声だけが生徒会室に響く。
話し合いは完全に膠着してしまっていた。
しばらくの沈黙の後。
この重苦しく居たたまれない空気を打ち破るように、
「紅莉居る?」
生徒会室の扉がノックされ、同時に淡々と乙部を呼ぶ声がした。
「はいはーい。あっ、鮎花(あゆか)どうしたの?」
呼ばれた声でいそいそと扉を開ける乙部を、全員が何の気なしに目で追っている。
「教室に置きっぱなしだったわよ」
小さく開いた扉の影からは鮎花と呼ばれた背の高い女の子が、呆れた顔で携帯を手渡しているのが見えた。