練習前からバキバキに折れた心で今日の稽古場である体育館の舞台に向かう。



こんなモチベーションで主役なんてつとまるんだろうか……。



学年演劇の主役に抜擢されてからというものの、アイドル的優等生としてのアイデンティティーを失いつつある。



既に舞台上に居た寿梨や会長に挨拶でもしようと、舞台の裏口をくぐった時だった。



「あっ! 大城先輩!」


「きゃっ! おはようございます!」



見慣れない数人の女子たちにあっという間に囲まれてしまった。



俺を見つめる目のどれもこれもがキラキラと煌めいてる。



憧れの眼差し……。



久々の感覚が自信の欠乏した全身にジワジワと染み込んでいくようだった。



「わたしたち演劇部のエキストラなんですっ」


「端役だけど大城先輩とご一緒出来るなんて感激ですぅ」


「大城先輩の演劇成功の為に精一杯がんばります!」



胸元でギュッと手を組み、頬を赤らめながら必死に思いの丈を告げる様。



こんな反応はミーハーでウザいとか今までは思ってたけど……。



スッゴく気持ち良いじゃないかっ!



無くした自信が全身に漲るようだ。