会長が言い終わるや否や、


「ダメダメ! 学年演劇は毎年恋愛モノって決まってるんだから! わたしがどれだけこの日を楽しみにしていたか……」


乙部は大きな口を一杯に開き、よく響く声で隣の仏頂面に猛抗議を始めた。



「確かに野郎だらけの舞台はムサいよねー。一部のコアな女子にしかウケないんじゃね?」


「ほらっ! 猿渡くんだってこう言ってるじゃない!」



こいつの意見を鵜呑みにするのは賛成しないけど……。


せっかく挙げた打開策を真っ向から否定された君原の表情がにわかに厳しくなる。


それを気に留めるでもなく、


「それか、敢えてそれを狙うってのもありじゃない? BLで……」


「却下だ」


バカ那津の悪ふざけに拍車がかかった所で、君原がすっぱりと切り捨てた。


……だから言わんこっちゃない。


こいつと真面目にやり合うほど、ストレスを受けるのは常識ある人間の方なんだから。



……俺のように。



それにさすがの俺も、その案にはいつもの愛想笑いで答える自信がない。



ていうか、俺が引き立てば野郎だらけでも恋愛モノでも正直どっちでも良いし。