「まぁ。最初の見せ場であんなロボットダンス繰り広げられたら、お客さんはコントだと思うだろうしね」
那津のケラケラとした笑い声がムカつく。
けど、言い返せない悲しさったら……情けない。
「そんな言い方をしてはダメよ。二人とも一生懸命やってアレなんだから」
フォローに見せかけた君原妹の本音がグサリと胸に刺さる。
お互いに緊張し合ってガチガチの俺と寿梨のダンスが一向に上達しないのは事実。
優秀な模範生徒の俺にとって台詞を覚えることなんて取るに足らない。
ついでに運動神経も抜群だからダンスのステップだってお茶の子さいさい。
なのに、寿梨とのダンスだけはいくら練習をしても上手くいかないのだ。
「まぁ……最悪はその部分のシナリオを変更する」
「ダメダメダメ! そんなことするくらいなら、この部分だけキャストを変更する!」
「……どういうこと紅莉?」
会長が出した苦肉の策も乙部の我が儘としか思えない意見をごり押しする。
呆れた声を出す君原妹に待ってましたと言わんばかりに椅子から立ち上がった。