眼鏡が反射してるせいで表情が見えないのが余計怖い。



那津と乙部のKYバカコンビでさえがポカンと同じ顔で圧倒されてんだからダブルで珍しい。



堅物で真面目な男は怒ると怖い……は、あながち俗説ではないと改めて思った瞬間だった。



お化けでも見たような顔で固まってる寿梨の隣で、


「落ち着きなさいよ飛鳥。話が進まないわ」


ただ一人、いつもと変わらない冷静沈着なポーカーフェイスが抑揚の無い声で言い放った。



その一言でハッとしたのか、眼鏡の端を上げる会長が小さく咳ばらいをする。



それを皮切りに会長はいつもの堅い表情に戻る。



……恐るべし君原兄妹。

コイツらの一挙手一投足はなんでこんなにも他人をドキドキさせるんだか。


クールビューティーの二つ名が泣いてるぜって話だ。



「スケジュールは大きく分けて昼と夜。昼は演劇部のエキストラと一緒に通し稽古。夜は我々だけで細かい修正や重点的な部分練習を行う。特に……」



素早く配られた手書きのプリントに目を通す。



夜のスケジュールに太字で書かれた“青年と姫のダンス 要練習!”の文字に顔が上げられなくなった。