「ややー、これはゆゆしき事態ですぞ……って。校長が立派な二重顎作りながら言ってたのよ」


俺の学年演劇主役が決まってから早四日。


ヒロインは決まる所か、ますます女子たちの醜い争いに拍車がかかる一方だった。


学年演劇を取り仕切る生徒会の会長と副会長に呼び出され、俺は生徒会室のパイプ椅子で小さく溜め息を漏らした。


……めんどくさいったらないな。



「でも、学校側からの推薦者はみーんな辞退しちゃってるんでしょ?」



何故か自称大城 澪斗専属マネージャーを名乗る那津が俺の横に居て、向かいでうーんと唸る副会長に問い掛けた。



「そうだ。生徒会が全面的に安全を確保するって言ってもダメだった」



ふわふわパーマ頭を捻る副会長 乙部 紅莉(あかり)の隣で、壁にもたれかかっていた会長 君原 飛鳥(あすか)が眉間にシワを寄せて呟く。



学年演劇という大舞台を前に初っ端から行き詰まっているコトが気に入らないのか、切れ長で整った顔を神経質そうに歪めて、


「……いっそのことヒロインを使わないシナリオにしたらどうだ」


シナリオ担当の乙部に視線を向けた。