文化祭を一カ月後に控え、校内は早くも浮き足立ち始めていた。


クラスの出し物、部活単位の屋台……。


浮き足立つ材料はそこら辺に散りばめられてる。


その中でも一際大きな要因を生み出しているモノ。


それは三日前の職員室での出来事から始まる。



「今年の学年演劇の主役は、大城 澪斗(みおと)くんに決定しました」



えびす顔のふくよかな校長が、全身の肉を揺らしながら大らかに笑っている。



「ありがとうございます。精一杯務めさせて頂きます」


職員室の所々からあがる拍手に、俺は愛想の良い笑顔でお辞儀をして見せた。




最高学年である三年生の中から選抜されたメンバーによる演劇は、この高校に毎年受け継がれてきた伝統行事。



中でも主役は三年間文武両道だった模範生徒に贈られる称号。



というのは建て前で。
学年演劇の主役には付属大学へ特待生として、入学金や試験免除なオプション付きで進学出来る仕組みになってたりする。