ー親愛―





“あっ…おはよう”


“おはようござ…”


“香坂さん!多田主任となんかあった?……噂になってるよ。”


《噂?》



私の頭の中のどこを探しても《噂》という言葉に繋がるも…の…


といえば…一緒に夜景を見に行った事…?


あっ…でも、これはまだ 入社する前だし…



じゃあ 海で会った事…?



…これも 入社前だよな…





どんなに頭の中で考えても 思い浮かばない




“三上さん?…それって、どんな噂なんですか?”



“うん。まぁ、気にしないでイイと思うけど、香坂さんと多田主任がデキテルって…。多田主任が寝てる仮眠室から、香坂さんが出て来たっていう…”



“あっ!それって…”



“えっ?何…?マジで…2人デキテルの?”



“違います!!そんな事はありません!…だいたい、多田主任は寝てたのに!なにが出来るって言うんですか?”



“そっか。なら、良かったよ”




三上さんは そう言うと、再び自分の持ち場に戻った




利用者さん達は 何があったのかという顔をして私達を見ていた



“香坂さん、大変だねぇ”



テレビを見ながら利用者さんのひとりが私に微笑む



まるで自分のおばあちゃんに微笑みかけられている気分



それだけで なんとなくホッとしている自分がいた