ー親愛―





“多田主任って、どんな人なんですか?…”



駐車場までの短い距離 相田さんと世間話をしている時に 私は聞いた




“あの人はねぇ…。天涯孤独な人なんだよ…”




小鳥のさえずる声



穏やかで爽やかな光が差す



清々しい朝の光景とは かけ離れた相田さんの低い



“幼い頃、両親を事故で亡くして 親戚に育てられてねぇ…。”



相田さんは 近所のおばちゃんの井戸端会議みたいに いろいろ話してくれた




両親を亡くして親戚中たらい回しにされ 両親の保険金が無くなると 施設に入れられた



その施設で16才になるまで育てられ 施設を出た多田主任は 外国に飛ぶ



外国で様々な人達に出会い 1度は家庭を築くが外国人同士の結婚……ましてや親がいない者同士で上手くいかなくなり 日本に戻ってこの仕事に着く



“あの人はねぇ、自分の生い立ちを誰にでも軽く話すのよぅ。さもかし、人事のようにね。聞いてる人間はどう言ってイイのか……ねぇ?”



その話しを聞いて いてもたってもいられなかった




相田さんに簡単に挨拶をして 私の身体は多田慎二の方に向いていた