多田慎二は 浜砂さんの手を両手で握り締め、優しく何度も声掛けをする
30分後 ナースが来るのを待っていたかのようにして 浜砂さんは亡くなった
浜砂さんには近親者がなく 翌日、遺体を引き取りに来たのは 遠い親戚だった
多田さんは 翌日の親戚が来るまで 浜砂さんの身体を綺麗にし、そばにずっと居た
初めての夜勤を終えた 私が帰る時にもずっと起きて 浜砂さんを見つめていた
“多田主任、今日昼から仕事なのに…身体もつのかな。”
心配そうに 自販機でコーヒーを買い 多田さんに差し入れしに行く三上さん
“あの人はねぇ、昔からああなんだよ。誰か利用者が亡くなると、親戚の人が来るまでじーっとそばにいるんだよ…”
疲れた顔に優しい笑顔が戻る 相田さん
…一体 多田さんって、どんな人なんだろぅ…



