車に向かう途中 身体の芯まで冷えてしまった私は ブルッと震えてしまう
それに気が付いた彼は 自分の着ていた上着を何も言わず 私の肩に掛けた
肩に掛けられたら上着からは 煙草の匂いがした
《この人、煙草吸うんだ。》
煙草を吸う人って 手持ちぶさたや、ストレスで1時間という時間の間になん本も吸うという、イメージが私の中にあった
私といる時間 たぶん2時間ぐらいになるけど 彼は一本も煙草を吸わない
私に気を使ってくれているのか それとも、私といる時間が煙草を吸うのも忘れてしまうぐらいのモノなのか…
自惚れだけど どっちにしても…なんだか嬉しかった
私の前を歩いている、広い背中の彼を見つめていると 自然と心の中は温かくなっていた
そして その優しさの裏に 目の前の背中に刻まれているキリストが嘘のように感じた
…もう1度見たい
“背中の刺青が見たい”
とっさに私は そう呟いていた



