ー親愛―





走る事20分




私達を乗せた車は 私の知らない山道へと入って行く




どこでもイイと言ったものの 少し不安になる




暖房の効いた車内




初めて乗る車なのに 不覚にも睡魔が襲ってくる




多田慎二は ほとんど何も話さない




…だから余計 眠気に襲われる




ウトウトしていると



“…着いた。”




背伸びをしながら多田慎二は言う




着いたその場所は 真っ暗闇で建物ひとつ見当たらない




“えっ!?…ここ?”




“イイから、降りて”




車から降り 妙な距離を保ちながら多田慎二の後を付いて行く




遊歩道らしい山道を 歩いて行くと




そこは 私達の住んでいる町が見渡せる絶好の場所だった




民家やネオン街、コンビニの看板、ファミレスのネオン達や信号が 様々な色を放ち




真っ黒のキャンバスの中で 幻想的な世界を醸し出す




私はその世界に吸い込まれそうになり 言葉を失っていた




“綺麗しょ?女を連れて来たのは初めてだけどね…”




暗闇の中の照れた横顔




思わず抱き締めたくなる