ー親愛―





多田慎二と金髪の子は そんな私の気持ちも知らず 壁を隔てて私の後ろの席に座る




まるで子どもみたいにはしゃぐ沙耶




私は壁に隠れるのに必死だった




“あの人の名前なんて言うんだろう?”




《多田慎二だよ》




そう心の中で呟いた



多田慎二が沙耶の好きな人だと知っていたら 好きにはならなかっただろう



何も失わないように 心にブレーキをかけてた






…もう誰かを失うのは 嫌なんだ




ひとりは 嫌だ